「現代世界の歩き方」(14) 北朝鮮の命運握る金王朝
去年暮れ、金正日総書記の突然の死で、息子の金正恩(キム・ジョンウン)氏が4月に朝鮮労働党第1書記に就任しました。父親の称号の「総書記」に代わって、肩書は「第1書記」。「総書記」という称号を、野球でいえば“永久欠番”にしたようなものです。
北朝鮮は初代の金日成、息子の金正日、その息子の金正恩へと世襲するという、まるで王国のような様相です。この世襲のもとで、北朝鮮は食糧難に苦しんできました。1995年からの3年間に計300万人が餓死したと伝えられています。
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北朝鮮の建国後、トップに立った金日成主席(建国当初は首相)は神格化され、彼の指導は絶対のものとされました。彼は農業指導で稲を密植するように指導します。これにより稲は不作となり、慢性的な食糧不足に悩むようになります。
また、山の森林を切り開き、段々畑にしてトウモロコシを植えることを指導しました。しかし、森林を伐採したことで山の保水力が失われ、雨が降ると鉄砲水となり、土砂崩れが相次ぐようになります。雨が上がって日照りが続くと、川の水はすぐ枯れ、深刻な水不足から農業が壊滅状態となりました。
金日成主席の指導によって食糧危機に陥っても逆らうことはできず、食糧不足は慢性的なものになったのです。
北朝鮮の国家構造は中国と同じです。中国の憲法に中国共産党が国家を指導すると明記してあるように、北朝鮮は朝鮮労働党の「領導」に従うと憲法に書いてあります。朝鮮労働党が国家の上に存在しているのです。
ただし、金正日総書記時代に労働党よりも軍が強い力を持つ「先軍政治」が実施されたこともあり、金正日総書記は国防委員会委員長に就任。国防委員会委員長が国家元首になっていました。こちらも世襲され、現在の金正恩氏は国防委員会第1委員長として、国家のトップに立っています。
北朝鮮はある種の“階級社会”です。先祖が革命運動の活動家なら「核心階層」、中小商店の経営者やインテリだったら「動揺階層」、資本家だったら「敵対階層」です。首都・平壌に住むことを許されるのは、核心階層の人たちだけです。
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日本と北朝鮮の間には拉致問題が存在しています。2002年9月、小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問。日朝間で「日朝平壌宣言」をまとめ、国交交渉を始めることで合意しました。この会談で金正日総書記は、日本人を拉致していたことを認めて謝罪しました。
拉致された日本人5人は帰国できましたが、その後は進展せず、日朝国交交渉は止まったままになっていました。
金正恩第1書記がトップに立ってから、北朝鮮は変化を始めました。軍の幹部が失脚し、「先軍政治」を見直し、労働党が軍を指導するという本来の形に戻そうという動きが見られます。経済に関しても、市場経済を重視した改革をする動きが伝わっています。日本とは4年ぶりとなる政府間交渉の再開に向けて動き出しました。今後の変化に注目が集まります。
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