ピーター・フランクルに見るユダヤ人の半生

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日本住まいのユダヤ人ピーター・フランクルのプロフィールをインタビュー形式に再構成してご紹介します。
数学者、大道芸人ピーターの半生は、ユダヤ人のさだめ（デラシネ、国際性）、才能（語学力、抽象能力、旅力）を垣間見せてくれます。


ーー 小さい頃の思い出は？

1953年ハンガリーで生まれました。

おじいちゃんは医者でした。
第2次世界大戦中、ナチスの強制収容所で殺されました。
おばあちゃんも強制収容所で銃殺されました。

母方の両親も銃殺されました。

父も母もナチスの強制収容所に入れられました。

銃殺寸前のところで戦争が終わりました。

両親は、私の名前をユダヤ人とわからないように「ピーター」にしました。


ーー なぜ数学を？

高校生の時、国際数学オリンピックで金メダルをもらいました。
自分に数学の才能があることもわかり、紙とペンさえあれば研究できる数学の自由さにも惹かれて、数学の道に進むことを選びました。

フランスに留学し数学で博士号をいただきました。


ーー どうして日本に定住を？

とても親切で、真面目で仕事を一所懸命にする日本人が大好きになりました。
日本は僕にとって大変居心地のよい国だと感じ、何度も日本を訪れるようになりました。

日本には宗教の自由、無宗教の自由があります。
仏教も神道もキリスト教も受け入れてしまうこの国の寛容さにひかれました。

父も母も、亡くなるまでに何度か来日し、日本を好きになってくれました。

1988年に日本に住むことに決めました。

「神がいるならあんな悲惨なことを起こすはずがない」ということで両親は戦後無神論者になりました。


ーー 何カ国を話しますか？

ハンガリー語のほか、ドイツ語、ロシア語、スウェーデン語、フランス語、スペイン語、ポーランド語、英語、日本語、中国語、韓国語の計11カ国語です。
大学で講義ができるレベルです。

簡単な会話なら30カ国語くらい使ったことがあります。

短期集中、One language one monthです。

毎年数回の海外旅行にも役立ちます。

 ＜*  ワン・ランゲージ・ワン・マンス ！＞


ーー なぜ大道芸を？

今、僕は各地に呼ばれて数学などの講演をしています。
そんな中で大道芸で、楽しいひとときをすごしていただいています。

医師で博識だった僕の父は、町の名士で、行く先々で様々な人に声をかけられ、会話を弾ませていました。

父はユーモアがあって、まわりの人はは笑顔で輝いていました。

僕は、父のように、人を喜ばせて生きていきたいと思っています。

大道芸は、失敗しても、例えば無言で腕立て伏せをして、「お仕置きでした」とやれば、笑いがとれます。
みんなに笑ってもらえるのが何よりです。


ーー 勉強で成果をだすには？

両親はユダヤ人として迫害を受け、全財産を没収されました。

父は

  「人間の財産は頭と心の中にあるものだけ」

というのが口ぐせでした。

私は、この言葉を胸に今まで生きてきています。

若い人はもっと勉強して自分に価値をつけるべきです。
学生はアルバイトや部活に時間をさきすぎです。

人間は集中すると効率良く勉強できます。

短期集中型が効果があります。
たとえば「この1カ月は数学をがんばる」と決めて、集中してやるのが上達のコツです。

わたしは語学もこの調子でやって来ました。

21世紀は専門家の時代になります。
そこで活躍するためには、目標を設定し、目標に向かって短期・中期・長期の戦略をたて、関係ない時間を削って時間を有効活用することが重要です。

自分に合った学習法を探して効率を上げれば、勉強も楽しくなり、遊びの時間もできるようになります。


ーー パワーはどこから？

いつも何かを学んでいたい。

飽くなき探究心が私のパワーの源泉です。


ーー これから日本はどうなりますか？

改革してもしなくても経済成長はないでしょう。

しかしこれはそんなに心配することではありません。

日本は戦後、焼け野原から大国の仲間入りを果たし、多くのものを築きました。

ヨーロッパを見ればわかるように、経済が停滞しても充実した市民社会が可能です。
これからはハードよりソフトの時代です。
既存の施設を生かして、心や生活を豊かにすることに目を向けてほしいと思います。


略歴

1971年 - 国際数学オリンピックにて金メダル獲得。
1975年 - パリ第7大学に国費留学。
1977年 - 数学博士号取得。
1978年 - ハンガリー・サーカス学校にて、ジャグラー免許取得。
1979年 - フランスに単身亡命。
1987年 - フランス国籍を取得。
1988年 - 日本に移住。
1998年 - ハンガリーの最高科学機関・ハンガリー学士院のメンバーに。


【cf.】
ピーター・フランクルウィキペディア
ピーター・フランクル公式サイト
日本経済新聞2012年3月19日、21日、22日、23日

ホロコースト（Holocaust。ユダヤ人大量虐殺） ウィキペディア。ホロコーストはヨーロッパの反ユダヤ主義に支えられて可能となりました。画像