― 作家で秘密諜報員 ―
サマセット・モーム(Somerset Maugham)は、小柄でどもりでした。
内気な性格でもあり、フランス育ちのためフランスなまりの英語、エビ足のために、級友にいじめられ、悲惨な学校生活を強いられました。
母と父は、10歳までに死んでしまいました。
英文壇での評価は通俗作家でした。
超エリートの兄とは犬猿の仲でした。
兄の613ページにわたる自叙伝には、モームのことは、ほとんど無視されています。
これらのことが相まって、とくに同性愛だったことがコンプレックスとなって、モームに作家の道を、ひいては諜報員の選ばせました。
秘書二人が、生涯にわたって、同性愛の相手役をつとめました。
この時代には、同性愛は猥褻罪で禁固刑や国外永久追放でした。
オスカー・ワイルドは、ホモであることを、公言して、禁固刑に処せられました。
スパイになるには、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語が話せたことも有利でした。
ルーズベルト大統領がCIAを設置する際は、アドバイザーにもなりました。
1919年から26年にかけて、東南アジアを精力的に旅しましたが、それは、ABCD対日包囲網構想のもとに、大東亜共栄圏構想を封じるための事前工作でした。
イアン・フレミングの『007』のモデルは、モームであるといいます。
モームは、下の過程で、ボンドなみに死地を乗り切っています。
- スイスでの諜報活動
- 南太平洋での諜報活動
- レーニン革命阻止作戦
- ABCD対日包囲網構想の下調べ
- ナチス・ドイツに対する諜報活動
- フランス脱出
- 米国での反ナチ活動
モームの作品は、諜報活動の副産物です。
シンガポールのラッフルズホテルや、タイのオリエンタルホテルも諜報活動の舞台でした。
モームは、東南アジアで安閑と著作活動のみに打ち込んでいたのではありませんでした。
* * *
【cf.】
田中一郎、『秘密諜報員 サマセット・モーム』河出書房新社
モーム『人間の絆』講談社文庫、自叙伝的小説
モーム『アシェンデン』ちくま文庫、秘密諜報小説
モーム『月と六ペンス』講談社文庫(画家ゴーギャンの伝記、月は芸術で六ペンスはカネのこと)
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